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第29話 公共性のない公共交通

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このブログをつくったのは、芦屋町を公共交通不便地域にさせたくないという一心です。
バスが好きでいろいろなことを勉強して来ましたが、芦屋町の後手後手の政策が芦屋町をどんどん苦しめている、自ら悪い流れへと進んできていることにストップをかけたい。たかが1町民という立場だとしても、なんとか芦屋町のバスを立て直す原動力になりたいと思ってこのブログを運営しています。

鉄道のないこの町にとって、路線バスは極めて重要な交通手段です。
第1回の公共交通会議の冒頭で会長が「利便性は高いのに利用者が少ない」というような発言を行っています。果たして本当にそうでしょうか?

☆メリットとしては
・20年間市営バスは運行本数をほぼ維持出来ている。
・行政の声を届けやすい
・市営バスは西鉄と比べて乗客の意見を聞き入れ、改善する努力をする企業である。

★デメリットとしては
・車なら30分以内にいける場所まで公共交通だと軒並み2時間かかる。
・遠賀川駅での接続は過剰であり、特にラッシュ時には運転間隔とほぼ同等の待ち時間。
・市営バスは非常に遠回りかつ他路線・JRとの接続が劣悪。
・定期券の互換性がない、民間バスより極めて割高。
・高齢者の割引がはぶられている。精神的な負担が大きい。外出機会の損失
・広域連携による路線維持というキーワードを多用するが具体性がなく、北九州市に依存していることを露呈している。芦屋町単独では無力である。


次に芦屋町のバス経営環境を少し専門的に分析していきましょう。

芦屋町は遠賀川の河口に位置しています。
町域に鉄道駅や国道3号線も走っていないため「陸の孤島」と揶揄されます。
しかし、ここで注目して行きたいのは駅からの距離です。

自衛隊前バス停から遠賀川駅までは道路距離で約5.1kmです。ターミナル駅である折尾駅までは御牧大橋経由で6.1km、遠賀川橋経由で7.8kmでした。決して遠くないのです。

芦屋町から概ね10km圏内を見ていきます。
イオンが5店舗(若松・岡垣・なかま・八幡東・直方)。サンリブが2店舗。ゆめタウンが1店舗。ルミエールが2店舗。トライアルが2店舗。家電量販店が3店舗です。総合病院は大学病院を含め5箇所。コストコまであります。高校も公立高校が7校、私立高校が3校。大学もたくさんあります。

立地は決して悪くありません。むしろ恵まれています。

路線バスの経営の条件の中にはいろいろなものがあります。
芦屋町は路線バスの経営を行うにはかなり恵まれた条件がたくさんあります。

以下にあげてみましょう。
人口は14000人であるが、コンパクトに密集した町であり人口密度が高い。
自衛隊の面積や遠賀川の水域面積を除くと可住地面積は8㎢であり、事実上の人口密度は1700人/㎢程度となる。
◎鉄道がなく、公共交通機関がバスに限られるためライバルがなく潜在需要が高い。
◎町内に総合スーパーや大型量販店がないため、町外に出て行く需要が多い。
◎最寄の鉄道駅はJRの幹線の主要駅であり強い求心力を持っている。また、都市圏郊外の路線であるため通勤需要も高い。
◎航空自衛隊の基地や海水浴場・レジャープールなど、多数の観光資源がある。

※特に航空自衛隊は週末などに隊員の外出により多くのバス需要がある。

芦屋タウンバスはコミュニティバスに転換した路線ですが、廃止代替としては県内トップクラスの便数と収支率(55%-75%)を誇っています。
なぜか?
これはそもそもコミュニティバスに転換するほどの規模ではなかったからです。

しかし芦屋町が自分たちでやると決めた背景には…。
複雑な芦屋ならではの事情があったと思います。
それは芦屋に西鉄と市営という2社が競合運行していたことです。

片方に補助金を出せばもう片方も求めてくる可能性がある。
乗客数やエリアの広さで圧倒的に優位だった市営を残そうとした考え方からの決断だったのではないかと思われます。

西鉄はこのところ福岡市内などのごく一部を除いた地域で廃止や補助金を求めてきています。
西鉄に限らず、JRバスや堀川バスなども同じです。モータリゼーションの進展により「路線バス」ではもはや採算が取れなくなってきているからです。

しかし、芦屋線は乗客数や運行規模が大きかったこともあり遠賀町、水巻町、福岡県などとの協議内容によっては、遠賀川から芦屋間での残存であったとしても、一定の補助をすることで存続できていた可能性が極めて高いです。

この場合は赤字分を遠賀町や福岡県と折半して一定の割合を分けて出すことになるので、現行のタウンバスよりは手出しが少なかった可能性が高いです。

わざわざコストのかかる町営バスにした意味がわかりません。

この芦屋町の西鉄バスと類似時期に廃止されたバスの事例を見ていきます。

◎新宮町(養護学校前~佐屋)2003年西鉄撤退
立花・佐屋地区のローカル過疎路線の一部を西鉄が廃止表明。
(※幹線区間は西鉄が運行を継続)
廃止対象路線は町の東西を結んでいたローカル系統、町の中心部や新宮町役場などと立花地区を結ぶローカル線として運行していました、かつては天神まで直通運行していた時期もありましたが分断などによって、また人口密度の希薄な沿線環境もあり利用が低迷していました。西鉄の撤退を受けコミュニティバスに再編。
全線100円均一のコミュニティバス「マリンクス」に転換。

西鉄時代には新宮駅口という駅からはかなり離れた停留所に停まっていましたが、JR筑前新宮駅構内※への乗り入れを実現し利便性を向上させるとともに、コミュニティバスとしての役割も統合しており、従来路線バスの走っていなかった相島渡船発着所など海岸エリアへも運行を行うなどの施策をとっています。ただし、収支率は運賃を大幅値下げしたためよくないようです。
※のちに筑前新宮駅→福工大前駅へ改称


◎添田町(添田~陣屋など)2003年西鉄撤退
幹線である田川方面への路線のみを福岡県・田川市・川崎町などと共同で補助金を捻出することで西鉄が運行継続し、添田ターミナル以南を中心とした町内ローカル区間に関しては大幅な赤字のため廃止を受け入れ。
全国の路線バス受託を行うシダックス系の企業・大新東に委託し「添田町バス」として運行を開始。運賃は10kmまで200円。10km以上は300円。極端な過疎地域を運行しているため収支率はよくありませんが、一定の利用者は確保しています。運賃は基本的に西鉄時代より安くなっている区間が大半。大幅に安くなっている区間も多いです。相当人口の少ない山間部の小規模な集落の交通手段として運行しており、コスト削減のため曜日によって運休だったりします。一方で主要路線を引き継いだ西鉄も利用者減少が止まらず、年々減便を繰り返しています。添田~田川間は2方面に残存していたものの大任経由の便は廃止・分割され、大任町区間はコミュニティバスに、添田町区間は川崎経由の便を延伸して運行を行っています。

◎みやこ町(行橋駅~豊津・木井馬場など)
当時の西鉄バス京築が小倉・福岡方面への幹線と補助金同意のあった一部路線を除き西鉄が撤退を表明したことに伴い、地元大手のタクシー会社・太陽交通が運行を引き受け。民間会社が自主運行する形態のため、ナンバープレートの色は緑。
わかりやすい運賃形態に改め通学定期の割引率を大幅に拡大、ダイヤも減便を極力行わず、増客を見込めるような運行形態、地域最大のショッピングセンター・ゆめタウン行橋を基終点するなどの策もとっている。車両面ではメリハリを利かせておりジャンボタクシーから中型路線車まで多種多様な運用が見られます。
現在、同事業者は他の自治体からも運行を受託するなど京築一帯を運行する事業者になっています。


転換した地域は他にもありますが、メリットが極めて少ないのが芦屋タウンバスです。西鉄のままならグランドパスが使えました。得パスが使えました。

町営バスになったのに、運賃はそのまま。定期券運賃も市営バスと競合しないように高額な路線バススタイルを維持。のちに市営バスと似たような運賃制度に変更。一方でバスカードやグランドパスも使用不可。
紙の回数券のみの発行で他の路線バスとの互換性もなし。
ダイヤは市営バスが設定。芦屋町は「要望」のみを行える体制である。

日本一のバス会社がやってダメだったものを町が引き継いで、さらにはてこ入れも改善も何もなければ収支など取れるはずがありません!!

事業契約は「事業者を変更するとシステム更新コストがかかる」ことを理由に市営バスと随意契約を継続しています。
他の自治体では一定年数で事業者の見直しが行われています。

※変更事例
自治体名 (旧事業者) (変更後の事業者)
鞍手町  誠心物流 → 西鉄バス筑豊
久山町  西鉄バス宗像→協和タクシー
新宮町  ウキコ  → 協和タクシー
岡垣町  遠賀タクシー→西部交通

事業費は初年度から年々上がっており、現在は初年度から2倍近い年間5300万円もの大金を市営バスに「有償で」支払っています。しかし、芦屋町においては事業者の見直しは一度も行われることすらなく、市営バス固定で12年連続で契約を自動更新しています。補助金のほうが安上がりです。バスの購入費も芦屋が払わないといけません。

公共交通会議にしても、あまりに実情のない薄っぺらな内容を議論してます。
利用者が望んでいた「鶴松団地増便」「土休日の増便」という多数意見はどこにも反映されることがありませんでした。
※ご指摘を受けましたので加筆。多数意見であることは芦屋タウンバス車内に掲示している乗客アンケートの結果に記載があります。

また、市営バスの収支率や運行改善に対してはまったく議論されていないそうです。
現在ではタウンバスのほうが芦屋側は幹線になっていて、極端な遠回りをする市営バスの乗客は相当減っています。

担当者いわく「市の事業だから口出しができない」んだそうで。
タウンバスに関しても「市営バスとの調整」が必要なんだそうで。

市営バスでは高齢者割引が除外されていることを担当者に「課題」として取り上げるよう要望しましたが
「事業者の不利益になるためできない」という回答でした。
町民の不利益より事業者を優先していることがよくわかる回答ですね。

芦屋町民のためのバスなのに。
あまりにレベルが低すぎる。
利用者は多いのに。





by Ashiya-Bus | 2017-02-20 21:40 | バスのこと
芦屋町のバスのことを真剣に変えたくて孤軍奮闘しているブログです。芦屋を陸の孤島にさせない、そんな一心で頑張ってます。

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